春風だより
坂本美優剣道物語《インターハイそして国体への道のり》
坂本美優。
現在、宮崎県立高千穂高等学校剣道部三年生。
この度インターハイ出場、そして国体選手へと選ばれた〈通称みぃ〉のこれまでの道のりをご紹介します。
春風館の門を叩いたのは今から10年前の年中さん。
キリッとした目が印象的で、ころんとしたちっちゃな女の子でした。
どちらかというとおとなしく、ここはどこ?今から何をさせられるんだろう?と言わんばかりでお母さんの側にキョトンとした顔で立っていました。
「お家では行き届かない礼儀作法を教えてほしい」 とお母さん。
そして、「近いから~」習い事を始めるよくある理由での入館でした。
ところが入館したものの、来たり来なかったり、月に2回来たかな?と言うほどで、とても熱心なご家庭とは言えず、しまいには「今日みぃは?」「雨だから休みなんじゃない?」と周りも認知する様になっていました。
月に2回ですから無理もありません、たまに来ると道場に馴染むことなくただただ立ち尽くす。
「こっちにおいで」「・・・。」
「練習しなくていいから端に行こうか」「・・・。」
そして微動だにせず泣き始める。それも仁王立ちで。
チャンスが訪れたのは年長で、欠場の選手に代わって急遽出場することになった試合でした。
もちろん訳も分からずただ泣いて帰ってきたのですが、この頃から少しずつ道場に来る回数が増えたように思います。
元々弟妹のいるお姉ちゃんですから面倒見がよく、学年が増すにつれて館長の教えに沿った気配りはすぐに身に付きました。
気を利かせすぎて仲間とぶつかる事もありましたが、みんなに慕われるキャプテンになるべく、先輩を見習い率先してトイレ掃除を行ったり、館長の指示をいち早く行動へと移したりと、その積み重ねで6年生でついに念願のキャプテンに就任。
春風館は常に社会を想定した道場ですので、キャプテンは会社でいう所の中間管理職。
館長の言わんとするところを言う前に察して行動、それを仲間に伝え、まとめる。
簡単な事ではありませんでした。
ある時は下の子の失敗は連帯責任としてキャプテンに解決を委ねられることもあり責任重大。
団体戦ではもちろん大将で、代表戦になると勝負の責任感も培われ、実は繊細でガラスのハートだったみぃですが、身も心も順調に育って行きました。
しかしながらそんなみぃにも思春期はやって来ます。
中学に入ってから引っ越した新しい環境での変化もあり、迷い始めます。
剣道に身が入らずもう辞めたい、と。あるときには稽古を休んで行方不明に。
館長も探しに行く騒動となりました。
みぃにとって大切な事は、と館長と時間をかけて何度も話しようやく落ち着いたものの、勝負の世界はやはり甘いものではなく、春風館始まって以来初、全国大会予選突破ならず、日本武道館への道は途絶えてしまいました。
それでもピンチはチャンスとなり、この頃から日本一になりたい、高校でもっと頑張ってみたいという気持ちが強くなり始め、館長に打ち明け高千穂高校を目指すことになりました。
それからは猛勉強をし、見事合格!
全国レベルで一流の稽古をする、言わずと知れた高千穂高校です。
中学校や道場でキャプテンを務め大将を張った精鋭ばかりの部員の中、泣きながら館長やお母さん、先輩に電話し弱音を吐くこともしばしば。
吐いては気持ちを持ち直し、心折れそうになりながらも必死に一日一日を過ごして行ったのでした。
頑張って!これ以上何を頑張ればいいの?そんな日々を乗り越えながらつかみ取ったインターハイ。
そして宮崎県代表の国体選手にも選ばれ、最高に優秀の美を飾る事になりました。
お家から近いし~礼儀作法が出来れば、そんな思いで始まったみぃの剣道物語は全国レベルの選手にまで育ったのでした。
そして少ない帰省でも必ず道場に顔を出し、館長・家族・仲間、みんなに支えてもらっている感謝を忘れない立派な子に成長しました。
心から誇らしく思います。
そして後輩たちの輝く目標を作ってくれてありがとう。
これからも益々の成長と活躍を心からお祈りしています。
ガンバレ みぃ!